2018年11月21日水曜日

え塾展報告④ 抽象画編

お待たせしました。え塾展作品、第4回目は抽象画です。

抽象画とひと口に言っても、本当に多種多様な表現があります。モチーフなどの対象物が無いゆえに、形も色もどう表現するか、ほとんどの部分を作者が選んでいかなければならないので、自然と多様な表現が出てくるのだと思います。

よく、「抽象画はわからない」と言われることがありますが、私はそういう方は具象画も半分ぐらいしか楽しめていないんじゃ無いかなと思っています(個人的な見解ですが^^; )。絵は絵の具などの物質でできています。その絵の具などの描画材を、作者は色を選び、絵の具のコンディションを決め、画面に付けていく…。そういう意味では私は具象も抽象も全く同じ要素を持っていると思います。ですから、絵を描く方は、絵を見る時にも「どんな色調で描いてるのか」「絵の具は薄いのか厚いのか、なめらかなのかゴツゴツしているのか」「筆使いは繊細か、軽快か、ダイナミックか」など、そういったことにも目を向けて欲しいなぁと思っています。

さてさて、作品のご紹介に参りましょう!



オイルパステル・ガッシュ 524×726mm
抽象画コース 在籍生作品

階段や洗濯物、木々など風景を思わせるモチーフが描かれていますが、具体的な風景を描いているというよりは、風景的なイメージを自由にコラージュするかのように扱っています。明るい色彩と、おおらかで伸びやかな線描が、心地よいリズムを刻む軽快な作品です。



鉛筆・ミクストメディア・色鉛筆
抽象画コース 在籍生作品

花をモチーフに描かれた作品です。写真からは伝わりにくいですが、細密デッサンのように緻密に鉛筆で描写されています。淡い水彩絵の具のシミに見えるような部分も、実は丁寧に色鉛筆で描写しています。その世界は、まるで極細の糸で編まれたレースのような繊細さです。



油彩 F6号
抽象画コース 在籍生作品 

人物クロッキーがモチーフになっていますが、人物を説明するのではなく、フォルムやクロッキー的な線の表情を再構成して絵作りしています。筆で絵の具をキャンバスに置くという当たり前の行為に、細心の注意を払って描いているのがわかります。クロッキーをして、人物画を描くのではなく、線そのものに着目する発想が面白いですね。



油彩 組み作品
抽象画コース 在籍生作品 

小さな作品をランダムに組み合わせて展示された作品群には、対象物はそれぞれ異なるものを描きながらも、どこか共通した世界観が感じられます。幾重にも塗り重ねられた色調に、インディゴブルーの線描が効いています。朱赤で描かれた人体のフォルムもおおらかで良いですね。



油彩 組み作品
抽象画コース 在籍生作品 

こちらはアルシュオイルペーパーという、油彩画のために加工された紙に油彩で描いています。絵の具の表情は基底材によっても大きく異なるので、いつもはキャンバスで描いているという方が、紙を使って描くと新たな発見があると思います。


上 組み作品より

こちらの作品は、アクリルメディウムでマチエールを作った上に油彩で描いています。街のようなイメージですが、風景を再現するのではなく、あくまでも街らしきフォルムをテーマとしつつ、絵肌と色調にこだわりながら描かれた作品です。単色ながらも色調が美しいですね。


オブジェ
抽象画コース 在籍生作品 

アンティークのフレーム、レース、布製の花など、好きで集めているものをブリコラージュ(寄せ集めて作る)して作られた作品です。個々のものは既製品ですが、集め、構成して世界を紡ぐ、こうした手法でも作品を作ることができます。素材は一朝一夕では集まりませんから、常日頃からご自分の感性に合うものを探している様子が伺えます。




これら、え塾展に出品された抽象画(抽象画とカテゴライズして良いのか疑問もありますが^^; )の作品は全て、「抽象画コース」の生徒さんの作品で、展覧会には上記以外にも様々な作品がありました(全部ご紹介出来ないのが残念です)。

ところで、抽象画コースの授業ってどんな感じ?と思われますよね。上記のような作品はどこから生み出されるのか…。実は、え塾の抽象画コースでは、皆さんが同じスタイルで何かを描くという授業は行っていません。課題もほとんどありません。「何を描くか」「どういった手法で描くか」それを個々に探すことからスタートします。もちろん、このふたつが最初から見えている方はほとんどいないので、授業ではそのきっかけをつかむためのスライドを使った「美術講義」というのを隔週で行っています。


スライドを使った美術講義の様子

「美術講義」では古今東西の作家や美術史の潮流を取り上げ、美術が何を問題としてきたのか、その作家が何を表現しようとしてきたのか、具体的な作品をスライドで鑑賞していただき、解説を行っています。そうした授業の中に、制作のヒントがたくさん含まれています。

「抽象画を見てもさっぱりわからない」とよく耳にしますが、わからなければ当然描くことも難しいのです。絵は視覚的なものですので、見ればわかると誤解されがちですが、鑑賞する上でも勉強は必要です。「美術講義」の授業では、美術の歴史を学び、美術が何を問題としてきたか、世界の価値観がどう変化してきたのか、そんなことに触れながら、絵をより深く近いしていただくための手助けをしています。

もちろん、描くための絵作りの基本やヒント、画材の扱い方などもきちんと指導していますので、自由に描いてみたい!絵をもっとよく知りたい!という方は、月曜のえ塾の「抽象画コース」をぜひご利用ください ^^

え塾の授業は随時ご見学できます。お気軽にお問い合わせください。


え塾展報告バックナンバー

え塾展報告① 人物画編
え塾展報告② 風景画編
え塾展報告③ 静物画編