2011年12月20日火曜日

5つの短期講座



「え塾」では曜日ごとに毎月通っていただく「レギュラー講座」を中心に授業を展開していますが、年数回、外部の方にも気軽に通っていただけるよう、入会金不要の、1〜2ヶ月で完結する「短期講座」を行っています。9月から12月までの間にも、日本画・水彩・人物・油彩・デッサンとあわせて5つの短期講座を行いましたので、ここで授業の様子を振り返りつつ、授業の中で出てきた作品をご紹介させていただきます。

日本画講座
日本画の講座は2ヶ月という、やや長めの講座でしたので、テーマ選びから、下絵、本画制作とじっくり時間をかけて制作していきました。

K・Jさん作品
南天と風景の写真を構成して描かれています。Kさんはとても熱心な方で、ご自宅でもどんどん描き進めていかれました。葉や茎の表現が変化に富んでいて、画面に良いリズムを作っています。葉を緑に表現し過ぎず、黄色や赤で表現されるなど、既成概念に捕らわれない色使いが上手くいっています。背景に使われたブルーが画面を引きしめています。



人物講座
人物講座は2ヶ月間、合計8回の授業でした。今回は2週・2週・4週とそれぞれスケジュールを分け、合計3人のモデルさんを描きました。人物はとても魅力あるテーマですが、描くのもなかなか難しいですね。今回の授業では、人体表現のコツをご説明しつつ、目の前のものを引き写す事だけを目的にするのではなく、描画材の魅力や色調など、魅力的に絵作りするポイントもお話しさせていただきながら授業を進めました。


I・Mさん作品
水彩とパステルを併用して描いた作品です。ご自宅で作ってきた水彩による下地の色彩を上手く活かして、画面の全体感をまとめる事に成功しています。顔や手など描き込むべきところはしっかりと押さえ、黒のカーデガンなどは表情がうるさくならないようにと対比を考えられていますね。とても絵になっている1枚だと思います。




K・Yさん作品
Kさんは今回、人物講座2回目の参加となりましたが、1回目の時に比べると格段と上達されました。人物の背景に張られているポスターの図柄を活かす事によって印象の強い作品に仕上げる事が出来ました。水彩の色調も綺麗ですね。



I・Hさん作品
Iさんは普段はじっくりと時間をかけて油彩を描かれる事が多いのですが、今回の講座では色鉛筆を使い、1日とか2日とか、比較的短い時間で、スケッチするような感覚で描くという目的を持って制作していらっしゃいました。下記の作品は、紙に油彩で下地を作り、その上に色鉛筆を3本同時に持って描くという荒技で(笑)描かれたものです。プロポーションなど気になるところもありますが、輪郭にこだわり過ぎず、柔らかく対象物を捉えていらっしゃるところに好感が持てます。



水彩講座&デッサン講座
残念ながら、写真を撮るタイミングを逃してしまった二つの講座。今回行った短期講座の中でも、最も外部からの参加者が多かった講座でした。気軽に始められるというイメージの水彩、基本はここからというイメージのデッサン。いずれも初心者の方には入りやすいイメージなのだと思います。受講生の大半が初心者の方達でしたので、用具の説明からじっくりと、たくさんのお話を交えながら授業を進めさせていただきました。目から鱗の話がたくさんあった、という感想もいただきましたが、絵を描く事のイメージが、少しは具体的になりましたでしょうか?難しい事もたくさんあったと思いますが、これをきっかけに是非、今後も絵を楽しんでいって下さいね!


油彩講座
「油彩の超基本講座」と命名していますこの講座では、古典的な絵の作り方を体験しながら、その中で油絵具や溶き油の基本を理解していただくというスタイルで授業をしています。今回の受講者は全員の方が、デッサンや水彩の経験者でしたので、授業の内容もちょっと難し目のお話をたくさんさせて頂きました。

Nさん作品



Wさん作品



ほとんどの方がいい感じで進めてらっしゃいました。ただ、全6回の授業の中、エスキース(下絵制作)に2週間、時間を取りましたので、油彩画を描けたのは4週のみ。もう2週程時間をかけられたらいい出来になったと思います。お時間のある方、是非お家でも続きを描いてみてくださいね!

さて、え塾では2012年も2月からスポット講座や短期講座を開催します。ご興味ある方は是非え塾のホームページをご確認くださいね!第1弾は2月10日のスポット講座「色彩の基礎知識」で、約2時間での講義です。皆さんのご参加をお待ちしています!(秋)

2011年10月26日水曜日

火・水デッサンコース/ペン画

10月の火曜日、水曜日のデッサンクラスはペン画にチャレンジしました。通常このコースは鉛筆デッサンによる静物や石膏デッサンを中心に授業を組んでいる のですが、今期は、慣れない素材にチャレンジしました。未完成の方もいらっしゃいましたが、全体に予想以上の結果を残してくれたと思います。以下にいくつ か秀作を載せますので御覧下さい。(河)

火曜日クラスKさん


火曜日クラスIさん


火曜日クラスNさん



水曜日クラスSさん


水曜日クラスSさん


水曜日クラスAさん

2011年10月3日月曜日

Tさんのスケッチブック



今回は、金曜絵画コースの生徒さんのスケッチブックをご紹介します。

Tさんは普段の授業では、透明水彩を使って静物を描かれていますが、授業以外でもスケッチや風景画など、ご自分の描きたいテーマで自由に描かれています。むしろTさんにとっては、制作する事は日常であり、授業は普段の作業の確認のため、といったスタンスでしょうか。とてもいいペースで描かれています。

今回ここでご紹介するスケッチブックは、ここ1ヶ月にTさんが描きためた「家のまわりの雑草」をテーマにした1冊のスケッチブックからの抜粋です。


クズとドクダミ


ヤブカラシ、エノコログサ


ハルジオンとヒメジオン


オギとススキ

この一冊がまるまるご自宅周辺の雑草についてのスケッチで埋め尽くされ、まるで植物研究家のスケッチのようです。全ページをご紹介できないのが残念です…。透明水彩の使い方も上手いですね。Tさんは、家のまわりを散策してはスケッチし、自宅に帰っては名前や性質を調べるという事を毎日繰り返したそうです。ちなみに、これを描かれていた頃はまだ残暑厳しい中…大変な作業だったと思います。



ドクダミ 部分の拡大


クズ 部分の拡大

絵画コースの授業では、最近、エスキースやスケッチなど、軽い仕事の面白さ、作品の良さについてお話ししています。Tさんのこのスケッチブックはまさにそういう良さを形にしていてとても良かったです。クロッキーやスケッチが日常的にできる事、これは絵が上手くなる最大の条件かもしれません。

ちなみに、これはシリーズ第一作目だという事です。T さん、続編楽しみにしています!


お知らせと訂正。

●「え塾通信」の記事に一部誤字がありましたので、この場で訂正とお詫びをさせて頂きます。(秋)

裏面の野見山暁治展の期間に誤りがあります。

誤)2010年10月28日(金)
正)2011年10月28日(金)




2011年9月22日木曜日

台風一過

今回の台風15号はひどい荒れ模様となりましたね。神奈川でも、一部の地域で停電があったり、交通機関の麻痺があったり、みなさまご不自由ありませんでしたでしょうか?前回の12号の時は、早めの決断&電話連絡だった為、結果的には不要の休講となってしまいましたが、今回は休講にして本当に良かったです。先週お配りした「悪天候時の授業変更」についてのプリントも、先週で全てのコースで配り終えていたので、当日は大きな混乱無く授業を休講にする事が出来ました。お電話でご連絡を頂いた方、ウェブで情報を確認して頂いた方、ありがとうございました。引き続き、悪天候時はご確認くださるようお願い申し上げます。

2011年9月20日火曜日

9月21日(水)の授業休講のお知らせ

台風15号の接近に伴い、災害や交通機関の乱れが予測されます。よって、9月21日(水)の授業を休講とさせて頂く事に決定しました。ご不便をおかけ致しますが、何とぞ宜しくお願い致します。なお、22日(木)の授業は通常通り行う予定です。

2011年8月8日月曜日

絵画制作の基礎知識2<中級編>


先日6日、スポット講座「絵画制作の基礎知識2<中級編>」が行われました。暑い中、たくさんの方にお越しいただきました。皆様、お疲れさまでした〜

今回のこの講座は<中級>という設定で、「見たものをそのまま描くのではなく、もう一歩進んで絵作りを考えながら制作したい」と考えている方に「絵作りのヒント」をご紹介するというものでした。前半は「光と影を意識的に捉える」という内容で、具体的に光の当て方で、どう見え方が変わるかというお話を写真資料や名画を使ってご説明させて頂きました。そして後半は、より自分らしく絵を展開していきたい方のために、風景スケッチの展開や、スクラップブックやピンナップボードを利用した絵の素材集めについてご提案させて頂きました。

スクラップやピンナップについてちょっとおさらいしてみましょう。

普段の授業で、「自由なテーマで描く」というようなことをさせていただくと、大抵皆さん不自由になりますね(笑)。「描きたいものを描きましょう!」と言われると困ってしまう方が多いのです。絵を描きたいと思っているのですが、いざ、好きなものを描いてみましょう!と言われると大概「何が描きたいかな?」と考え込んでしまう。だからといって普段課題でやっているモチーフで満足しているかというと、やはりもっと自分の好きなものを描いてみたいと考えていらっしゃる。また、風景や家族など描きたいテーマはあっても、では「実際どんな雰囲気の絵にしたいですか?」とお聞きすると、なかなか描きたい絵の雰囲気がイメージできない、という方も多いですね。

当然のことと思われるでしょうが絵にとってこの「描きたい絵のイメージ」は無くてはならないものです。イメージが無いのに絵は描けません。この「イメージする」という作業をどれだけ意識的にできるかという部分こそ、絵にとって重要な部分だと思います。そして、このイメージを具体的にする手助けをしてくれる方法のひとつが、スクラップブックやピンナップボードを利用した素材集めなのです。

インターネットの検索で、たまたま引っかかったとあるブログで、ピンナップボードに付いてこんな記述がありました。

「素材は、雑誌の好きなページの切り抜き、ポストカード、なんでも良いのです。…ピンナップは頭の整理にもなるんです。仕事でもよく使います(作ります)。ショップや、ファッション、アクセサリーのメーカーでは、次期シーズンのテーマを決める時に、プレゼンボードを作ります。その前段階がピンナップです。ビジュアルがあるとイメージが言葉でなく目で伝わります。」

バラバラにあるイメージがピンナップという形で一堂に集められ、やがてそれがプレゼンボードというはっきりとした形になっていく。そういうイメージの持ち方は絵作りにも必要なプロセスですね。「イメージが言葉でなく目で伝わります」という部分もポイントです。

「私はまだ目の前のものも上手く描けないから、そういう話はまだ先のこと」と思う方もいらっしゃるでしょう。でも、絵のイメージというのは、写実的なものがある程度描けるようになっていく過程でだんだんと湧いてくるようになるものでもないのです。イメージ作りは、鉛筆を握ったその日から初めて頂いてもいいと思います。「上手くなったら、いつかこんな絵を描いてみたい」、そんな目標があってもいいと思います。

普段から気になったものを少しずつ集めていくと、その中から、案外ご自分の好きな感じや興味のあるものが見えてくるはずです。1枚ではご自分のイメージにならなくても、数十枚あればきっとそこから何か見えてくると思いますよ。


写真やスケッチからの展開。
色調・タッチ、素材をいろいろ変えてみると
ひとつの風景でもいく通りかの絵が出来ますね。



ピンナップボードの良さは、イメージが見渡せることですね。
ご自宅の一角にこういったスペースを設けて、
日常的に眺められるようにしておくとイメージが湧いてきますよ。


さて、今回の「おまけ実習」は「葦(あし)ペン作り」でした。(ちなみに前回はパステル作りでした!)この「葦ペン」構造も作り方も至ってシンプルなのですが、なかなか魅力があります。ミリペンやボールペンには無い、線を引く楽しみがあります!みなさんぜひ、このペンでゴッホに負けない(?)スケッチをしてみて下さいね!



ゴッホのスケッチより。(葦ペン使用)



次回のスポット講座は9月11日のクロッキー教室です!。
皆様のご参加をお待ちしています!(秋)




2011年7月16日土曜日

土曜デッサンコース

                            (模刻作品)                          
おひさしぶりです
土曜デッサンコースです。

新しく7月から土曜午後にもデッサンコースが開設いたしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

そして久々の授業紹介。
今回の課題はリンゴの模刻、
つまりリンゴを超リアル!に作りましょう
ということです。

デッサンは基本的に平面なのになぜ立体?と思う方もいらっしゃるでしょう。

ではなぜ?
デッサンでは、「平面の中に三次元空間を見せる」という
普通な様で実はかなり難しいことをしています。
それをするにはかなり意識的に立体をとらえなくてはならないのです。
「ものの「キワ」に近い部分などでは特に注意を払い〜」などで
「『カタチ』がただのカタチではない〜」など。
なかなか言葉からでは実感が難しかったりします。

というわけで、それなら実際に作りながら触って確かめてみよう
ということなのです。

まずはリンゴのデッサン。
この時、リンゴの軸、ハリ、質感、それぞれの見たリンゴをとにかく細密に。
そうしてできたデッサンを見て生徒さん方の感想はなんと
「おいしそう!」などなど。
これは総合的にリンゴそのものに近づいたということが言えます。

そのデッサンで気にしたことをよく思い出しながら紙粘土でいよいよ模刻。
生のリンゴをモチーフにしているため数週間もすれば傷み
しわしわになりますが、ここはデッサンでしっかり見ていた為、
焦ることなく作業は進みます。
そしてキワの部分にまわり込んでいく『カタチ』を実感しながら作り込みます。
みなさんふだんは描くことができない360°の世界を楽しんでいたようです。

そして着色。
アクリル絵の具で自分のリンゴをさらにそのものに近づくべく着色します。
そして完成!


かなりいい出来です、
ここまでくると達成感があったと思います。

デッサンに対しての興味と立体に対しての興味がつながったりしていると
これからのデッサンが面白くなることでしょう。

2011年6月29日水曜日

ふたつの超基本講座

展覧会会期を挟んで行われた、ふたつの「超基本講座」油彩・水彩ともに無事終了しました。


今回は「超基本」というネーミングでしたので(笑)、単なる初心者対象のやさしい内容の授業、ということではなく油彩画や水彩画を描くなら知っておいていただきたい、画材や技法についての知識について具体的に触れながら、ある程度「再現性の高い表現」を目標に、描き方を手順を追ってご説明させていただきました。初心者の方を対象とした授業でもありますが、実は1〜2年のキャリアをお持ちの方が受講されるととても納得出来る内容になっています。


普段のレギュラー講座の授業では、それぞれに描きたいイメージをお持ちだったり、経験量がまちまちだったりするので、一つの授業内で、描き方を一から十まで具体的に指示することはないのですが、今回の講座はそういう形式の授業スタイルで行いました。



 

実際の授業では、まず冒頭に今日やるべきことの講義があり


 
油彩の下絵 カマイユの技法



油彩画の下絵 インパストの技法(盛り上げ) 

  

  ↓


 場合によってはデモンストレーションがあり


  ↓


 そして描いていただいて


  ↓


 上手くいかない部分は加筆指導をさせていただき


  ↓


 その後授業の終了時には、毎回作品を並べて今回出来たところまでを批評会の形で復習



という事をさせていただきましたので、皆さんけっこう具体的に理解していただけたようでした。油彩の方には、ロココの作家シャルダンの空間表現をお手本に、水彩画の方には透明水彩の技法を使った描き方・紙の白地を活かす手法を、それぞれ講座の核として授業を展開させていただきました。普段の授業よりも講義的な内容が多く、内容も盛りだくさんだったため、理解されるのも大変だったと思います。お渡ししたテキストをもとに、ぜひ皆さん普段の制作で復習してみて下さいね!



油彩画のお手本に使用させていただいたシャルダンの静物画



「水彩の超基本講座」テキストより:持っているパレットの色を把握するために色見本を作りましょう!



「水彩の超基本講座」テキストより:透明水彩の混色展開



油彩画の超基本講座より Iさん作品


さて、今回のこの「○○の超基本講座」、受講のチャンスを逃してしまった!という方の為に、水彩画のみ10月に再度行う予定です。これから水彩をはじめてみたいという方も、ぜひお待ちしています。(油彩画の方はただ今調整中です)(秋)



2011年6月1日水曜日

第4回「え塾」展始まりました。


今年は昨年度より10名多い、74名の塾生の方に出品していただけました。

6名の講師作品も含め、総数147点の展示となり昨年同様、とても見応えのある展示となっています。


「え塾」の教室にご興味のある方、ぜひこの機会に授業で描かれた作品の数々を見にいらして下さい。


■ 期間/2011年5月30日(月)〜6月5日(日)


■ 時間/9:00a.m.〜6:00p.m.
(初日12:00p.m.から 最終日5:00p.m.)


■ 会場/神奈川県民ホールギャラリー
第2展示室・第5展示室 

 
観覧無料。どなたでもご覧いただけます。(秋)




2011年3月24日木曜日

Yさんの制作のプロセス

繰り返されるたくさんのエスキース

月曜の抽象コースのYさんは、長い間具象絵画を描かれていて、個展も何度か開かれているベテランです。絵のモチーフは、静物や、以前住んでいらした京都のお寺が多かったようです。Yさんは一年前から月曜日の抽象クラスに入会されて、抽象絵画に挑戦されていますが、今回ご紹介するのは、一枚の絵を仕上げるまでのたくさんのエスキースの一部です。

抽象画を描くと言っても具象と抽象の違いにどこかで線引きができる訳でもなく、具象か抽象かということは本来どうでもいいことかもしれません。Yさんはこ の作品では、具象絵画を描かれていたときと変わらずに、古都らしい京都の瓦の家並みから着想されています。エスキース群からは、少し俯瞰した視線で、連続 して見える瓦屋根と、その隙間からのぞく白壁から、説明的な要素をだんだん取り去ったり、逆に具体的なイメージに戻ったりしながら、その風景の中にある絵 画の造形要素を純化していく過程が伺われます。それぞれのエスキースの下には何を意識し、どこに重点を置いて描いたのかをメモされていて、一つのイメージ を追いかけ、追求していく心の動きが伝わってきます。


家の形、屋根の形がまだ残っているが、説明的な要素はだいぶ整理されている

水彩の表情もきれいです

Yさんはエスキースを終え、油彩の制作に入られていますが、その制作の過程も写真で記録されています。画面の中で起きている事柄を見逃さずに、それを充分に味わいながらゆっくりと絵の歩を進められている姿勢には、Yさんの確かな眼が感じられます。
絵の完成が楽しみです。(北)

2011年3月23日水曜日

大震災の日の授業

倒れてひび割れた石膏像の肩

このたびの地震で被災された方々に心からお見舞いを申し上げますとともに、亡くなられた方々とご遺族の皆様に深くお悔やみを申し上げます。

あの大震災の日は金曜日の午後の絵画クラスの授業中でした。石膏像が2体倒れて一部破損しただけで、それ以外の被害は、え塾、横浜美術学院共にありませんでした。もちろん、建物や設備よりも生徒の皆さんに怪我ひとつなかったことには本当に安心しました。え塾では電気、水道も止まることはありませんでしたが、電話も携帯も繋がらず、電車はストップしました。しばらくして落ち着いてから、男性の生徒さんは何時間かかけて歩いてご自宅へ帰られました。余震が何度もあり、時間が経ち、少しずつこの災害の規模が解ってくるにつれて、みなさんご家族の方やお知り合いの方の心配をされていました。とりあえずご自宅に帰ることが出来ないので、描いている方、なかなか落ち着かず、描くどころではない方など様々でしたが、深夜になり、もう学校に泊まることを決めた方々に対して「日本の絵画の系譜」と題して一時間程の美術講義を行ないました。そこから、お酒とつまみでもう少しリラックスした雰囲気で美術のお話などをさせていただいて、後は近くの防災センターから借りてきた毛布が配られ寝ることになったのですが、さすがに皆さん一睡も出来なかったようですね。

交通機関のこともあり、え塾はその後約一週間お休みとさせていただきましたが、停電の指定地域から外れていることもあり、3月21日から授業を再開することが出来ました。東北で被災された方々の一日も早い復興をお祈りしています。(北)

2011年2月25日金曜日

デッサン超基本講座終了しました。

2月の水曜日に行ったデッサン超基本講座、計4回の授業が終了しました。授業のご紹介を復習を兼ねて行いたいと思います。

配布テキスト


今回の主な講義内容は

・1日目
 透視図法(遠近法)の基本説明。「1点透視」「2点透視」「3点透視」とは。そして、デッサンの基礎テクニックとして「単体の捉え方」。絵の中の遠近感がどのように作られているのか、そして形を立体的に見せるコツは理解して頂けましたか?

・2日目
 空間表現の基本説明。室内・街・野外風景の見え方、捉え方。1日目にご説明したの遠近法を使って、実践的な空間表現のポイントをお話ししました。細部にわたって、遠近感の考え方が重要な事、お解りいただけましたか?

・3日目
 陰影表現の基本説明。物にあたる光、そして陰と影。形を立体的に捉えるには、漠然と明るい・暗いを捉えるのではなく意識的にそれらを形に結びつける事が必要です。「陰」と「影」の違い、「陰」の中に見える反射光、この理解があると、デッサンは格段に良くなります。
   
・4日目
 古典絵画から学ぶ、絵画の中の陰影表現。絵の中で、具体的に光と影はどのように表現されているのか、絵を鑑賞する際にも気をつけて見てみましょう。授業の中ではニコラ・プッサンなどの絵画を挙げ、絵の中の光の表現についてご説明致しましたが、如何でしたでしょうか?

それぞれ、講義を中心に進め、講義の内容を理解して頂くために、テーマに沿ってシンプルなデッサンをして頂きました。
  
デッサンは、目の前の対象を観察し、描くことによって身に付く力と、知識として知ることによって見方が変わっていくということがあると思います。今回は知識的な部分にウエイトを置いて授業を行いましたが、如何でしたでしょうか?今回の授業だけに終わらせず、お配りしたテキストを元に、ぜひ今後の制作にもお役立て下さい。繰り返し意識する事で、理解は確実に深まっていくと思います。
参加された皆さん、お疲れさまでした。

さて、この「超基本」シリーズ?ですが、今後「油彩の超基本講座」と、「水彩の超基本講座」を短期講座として実施する予定です。油彩は、画用液、絵具、筆等の基本知識から、キャンバスの張り方、下地作りなどを学びます。また、水彩の方は画材についてはもちろんのこと、いくつかの水彩ならではのテクニックを学びます。初心者の方、これから新たに油彩や水彩を始めたいという方、経験者だけれども基本事項を再確認したいという方、ぜひご参加下さい。(北)

2011年1月12日水曜日

櫃田伸也展─自由参加の特別授業

櫃田伸也展会場

毎日寒い日が続きますね。
今日は1月10日の祝日に行った、自由参加の特別授業についてご報告します。
この授業は現在、損保ジャパン美術館で行われている櫃田伸也展の会場で、作家本人からお話を聞くという授業でした。
この展覧会は、櫃田伸也先生が東京藝術大学の学生であった1960年代の初めから、現在までの仕事を見渡せる見応えある展覧会になっています。会場は、それぞれの時期の代表作が、テーマ別に展示されていました。
先生は、壁、地面、傾斜地、山、広場・原っぱ、洪水など、日常の風景の中から見つけた様々なかたちがどの様に作品となっていくのかを丁寧に説明されました。興味を持たれていることや、モチーフとしている風景自体が、決して美しい天然自然の風景ではなく、むしろ人工物と自然との関係の中にあること。また、境界周辺にある様々な表情、サッカーの試合でのゴール周辺で起こる出来事までを絵の要素として捉える視点は独特で、まさに画家の眼を感じました。工事現場に積まれた土や砂利の山、青いビニールシートで覆われたかたちまで絵のかたちとして面白いと感じる感受性には皆さん驚かれていたようです。先生ありがとうございました。(北)

エスキースやメモ、絵のイメージソースになった写真や絵画を説明される先生


今回は、特別に「え塾」の生徒さんのためにお話しいただきましたが、当日都合がつかなかったり、特別授業の情報が届かなかったり(申し訳ありません)で、参加できなかった方は、1月22日に美術館主宰の先生のギャラリートークがありますので、これに参加されると良いのではないでしょうか。

損保ジャパン東郷青児美術館大賞受賞記念「櫃田伸也展」
1月8日(土)〜2月13日(日)
ギャラリートーク1月22日(土)午後1時30分から
美術館情報 → http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index.html