2011年3月24日木曜日

Yさんの制作のプロセス

繰り返されるたくさんのエスキース

月曜の抽象コースのYさんは、長い間具象絵画を描かれていて、個展も何度か開かれているベテランです。絵のモチーフは、静物や、以前住んでいらした京都のお寺が多かったようです。Yさんは一年前から月曜日の抽象クラスに入会されて、抽象絵画に挑戦されていますが、今回ご紹介するのは、一枚の絵を仕上げるまでのたくさんのエスキースの一部です。

抽象画を描くと言っても具象と抽象の違いにどこかで線引きができる訳でもなく、具象か抽象かということは本来どうでもいいことかもしれません。Yさんはこ の作品では、具象絵画を描かれていたときと変わらずに、古都らしい京都の瓦の家並みから着想されています。エスキース群からは、少し俯瞰した視線で、連続 して見える瓦屋根と、その隙間からのぞく白壁から、説明的な要素をだんだん取り去ったり、逆に具体的なイメージに戻ったりしながら、その風景の中にある絵 画の造形要素を純化していく過程が伺われます。それぞれのエスキースの下には何を意識し、どこに重点を置いて描いたのかをメモされていて、一つのイメージ を追いかけ、追求していく心の動きが伝わってきます。


家の形、屋根の形がまだ残っているが、説明的な要素はだいぶ整理されている

水彩の表情もきれいです

Yさんはエスキースを終え、油彩の制作に入られていますが、その制作の過程も写真で記録されています。画面の中で起きている事柄を見逃さずに、それを充分に味わいながらゆっくりと絵の歩を進められている姿勢には、Yさんの確かな眼が感じられます。
絵の完成が楽しみです。(北)