2010年6月28日月曜日
「短期講座 人物を描く」最終日
人物講座もいよいよ最終回となりました。生徒さんの中には続きをご自宅で描く方もいらっしゃって、「家で描いていたら、顔がダメになってしまいました!!!もうダメです〜」と言う焦りの声も複数聞かれました(笑)。ご自宅で描かれる場合、モチーフ(モデル)を見ていませんので、特に顔などは難しいかもしれませんね。ただ、人体や顔の構造を理解していて、客観的にご自分の画面が見ることが出来る場合は、モチーフ(モデル)が無い方が絵が良くなる場合もあります。仕上げる事を優先させるのではなく、自分の絵にとって良い事をしてあげましょう。また、必ずしも加筆は必要ではありません。自分の作品を客観的に見直し、感じた事をメモにしてみる。気になる部分は別の紙か何かにスケッチしてみる。参考に出来そうな作品(画集など)からヒントを得てみる、など次の授業でやりたい事をイメージしておくと良いでしょう。
殆どの方が、人物初体験にもかかわらず、なかなか皆様健闘されていましたね。受験生だったとしても初めての人物画、1枚目はこのぐらい描ければ十分ではないでしょうか。形の狂いこそはありますが、色彩や絵具の付きなど魅力的な作品がいくつもありました。
Uさん作品
本作品が油彩画3枚目というUさんは、まだデッサン的にはおかしなところがあるものの、ご自分の絵の中で色彩を上手く表現されています。グリーンを基調とした色彩の中に浮かぶ、ガラス玉のように透き通って見えるネックレスがとても魅力的ですね。
Yさん作品
後半仕上げようとまとめに入られた事で消極的に見えていましたが、最終日になって大きく彩度の高い絵具を入れ直しされた事が功を奏し、足から背景にかけての表現が魅力的な作品になりました。こうした意識で頭部も捉え直されると良かったです。
Mさん作品
色調や画面感に独自のこだわりを持つMさんは、今回もぶれる事が無くていねいに一筆一筆進めていらっしゃいました。まだ座面の部分など空間が表現出来ていない部分がありますが統一された色調が美しい作品になりました。
Iさん作品
授業では、絵具は「塗る」のではなく「置く」という意識で画面につけましょう、というお話をさせて頂く事があるのですが、Iさんは今回の作品でちょっとそういう感覚が掴めたようです。ご自宅ではご自分の手を鏡に映して観察されたというだけあって、しっかりと重みの感じられる人体が描けていますね。
Oさん作品
画面の中の色調を、ホワイトを使った明度差でコントロールされていたOさんですが、透明色を使った「グレーズ」、「明度」だけでなく「彩度」の高い絵具を使う事などを実践して頂く事で、絵具に表情が出てきました。しっとりした寒色と暖かい肌色の対比が美しい作品になりました。
Hさん作品
講座の中で唯一ガッシュを使って描いていらっしゃるHさんには、タブローというよりはドローイング的な意識で作品を仕上げて頂きました。Hさんはモチーフを見過ぎず、ご自分の画面を見てじっくり描く方で、絵具や線の表情が面白い作品になってきています。
毎朝9時半開講の今回の講座、皆様本当にお疲れさまでした!
次回、冬の「人物を描く」短期講座では人体の構造についての簡単な講義を挟みつつ、より描くポイントの理解を深めて頂けるような内容にグレードアップします。また、次回の講座でお会い出来る事を楽しみにしています!
2010年6月25日金曜日
火曜・水曜ーデッサンコース・アクリルコース授業紹介
この課題は白い画用紙とは違い、既に中間調子が画面にあるため、明るさと暗さの両方から描いていくといったプロセスで描いていきます。
途中、ホワイトのパステルを乱用しすぎて画面が見づらくなることも、多々見受けられましたが、最終的に気持ちいい秩序を画面に作ることが出来ました。
木炭紙大有彩紙、 コンテ、パステル等 12時間
アクリル画教室もスタートして3ヶ月、古典技法を中心に課題を消化してきましたが、今回の課題では、描き出しの段階で画面に絵の具を自由にぶちまけ(?)そのことで出来た染みを利用して、モチーフを描いていくというプロセスで行いました。参考資料としてベン・シャ―ン等の画集をお見せして解説をしました。最初は生徒さんも半信半疑で始めていらっしゃいましたが、思いのほか絵の具によって出来た染みが綺麗で、Eさんなどは「このまま額に入れて飾っても良いかもしれませんね」などと冗談が出るほど、見方によっては面白い抽象作品になっていました。
最終的に完成した作品は、まだ、未消化な部分も残しているのですが、ただ見て写すのではなく、絵の中の偶然性を利用しながら描いた魅力の多い作品に仕上がりました。
B3サイズ画用紙 アクリル絵の具 12時間
2010年6月22日火曜日
月曜─抽象コース・絵画コース・水彩画コース授業紹介
2010年6月21日月曜日
「短期講座 人物を描く」七日目とクロッキー教室
そろそろゴールが近くなってきた七日目。この講座、モデルのポーズ時間が20分ずつと決まっているせいか、授業中の皆さんの集中力はものすごいです。ダレる事がありません!受講生の中には「え塾」の授業をこの短期講座を含め、週3コマも受講して頂いている生徒さんもいらっしゃるのに「人物は、楽しいわ〜」と仰って、とても楽しんで描いて頂いています。授業を運営している者にとっても、嬉しい限りです!
さて、時間が迫ってくると「顔が出来ていない!」「手も描けていない!!」「ネックレスが描けていない!!!」と焦りが出てきてとにかく仕上げたい気持ちになってきますね。でも、近視眼的に描写する事は禁物です。ポーズ中はずっと描いていた、モデルの休憩中も描き続けた、なんていう場合は細部に気をとられすぎて、全体感を見失ってしまう危険性大です!難しい事ではありますが、自分の絵を見る時間を極力作るようにしましょう。
授業中によくお話しする事ですが、絵を見る人は実際にモチーフやモデルがどんなだったかという比較はあまりしないものです。絵、それだけを見ますよね。ですので、その絵の中で完結していれば良い訳で、自分の絵の中で必要がないと思えば、ネックレスもコスチュームの柄も思い切って省いてしまう事もありです。そして、絵の中でそういった物を描く事が絵の魅力となり得ると思えばどんどん活用しましょう!何をどう描けば良いのかは、画面が教えてくれます。自分の画面が見られるようになれば、絵を作る事の面白さが見えてきますよ。
Oさん作品
Oさんは、経験量自体はそれほど多くはないのですが、元々非常にバランスがよく、描けば描くほど形が良くなっていきます。また、細部を描きながらもクロッキー的な動きを押さえる事が上手く、単調になる事が少ないです。ただ色彩が汚れる事を嫌い、澄んだ色で描こうとする反面、ホワイトを多用しすぎて途中白濁してしまう場面もありました。明るい部分を描く時、ホワイトを混ぜた絵具を使うだけでなく彩度の高い色を使っていく事をご提案し、ルノアールの図版を1枚参考にお渡ししました。熱心なOさん、あの1枚の図版からきっと何かを得て下さる事と思います。来週が楽しみですね。
おまけ
6月20日はクロッキー教室の日でした。定員は20名でしたが、今回のクロッキーは予備校生である「ハマ美生」の参加が多く、「え塾生」との比率が1:1という構成になりました。高校生や浪人生などの受験生に挟まれての授業は、「え塾」のみなさんにとってはやや緊張する空間だったかも知れませんね(笑)。でも、ひとたびポーズが始まると、そこはやはり上手くなりたい一心ですので、皆さん真剣にクロッキー帳と格闘されていました。
ポーズ終了後には、今回の授業でもっとも上手くいったと思う作品を選んで頂き、アドバイスして終了となりました。いくつか形を捉えていく際のアドバイスやイメージ作りなどお話しさせて頂きましたが、「え塾生」の方々に今回もっとも印象に残ったのは、同じように熱心に制作する受験生の姿だったかも知れません。
2010年6月11日金曜日
「短期講座 人物を描く」六日目
さて、中間講評では個々にご自分の作品を離れた距離で見直して頂き、ご自分なりの感想を言って頂きました。興味深かったのは「授業中に頑張って描いたところが上手くいっていない」という事を気にされていた方が数人いた事です。例えば、ある方の絵では絵の中の人物の左腕がとても上手く描けている、一方、右手は絵具が形についていない。聞いてみると右手はかなり時間をかけて頑張ったが、左手は殆ど手数を入れていないで出来てしまったという事でした。実はこういう事はよくあって、上手く描けている方は、空間的な動きや形態などいくつかの要素が絡んだ状態でストンと記憶に残り、感覚的に理解していたので捉えられたのだと思います(こういう感覚を、クロッキー力といいます)。上手くいかなかった右腕は、視野が狭くなって肌の明るさ暗さだけを見ていたのではないかと思います。肩から下がった二の腕は肘でねじりの動きが入り、垂直から水平方向へと空間が動きます。そうした動きは、肌の明るさ暗さや輪郭的な形を見ているだけでは到底追えない形です。上手くいかないと思う時は、「何かを見落としている時」。そう思って時には筆を休め、じっくりと人物を見つめ直しましょう。時には、描かずに「見るだけ」も有効です(この時に、ちょっと席から移動して、遠くから見たり、左右など違った方向から確認すると新たな発見がありますよ)。
そして、今回の中間講評では、「肌は肌色でなくてはいけないか」というひとつの問題提起をさせて頂きました。人物を描いていると、肌は肌色にきれいに表現したいという方が多いですね。もちろんその事自体は間違ってはいません。ただ、肌をきれいに表現したいという事は、パレットできれいな肌色を混色して画面に置くという事とはちょっと違うのです(油絵の具には混色しなくてもジョンブリアンという絵具がありますが、受験生だった時にはその絵具は絵具箱から追放すべき色と言われていました 笑)。例えば背景などは「壁の色をそのまま再現しなくても良いですよ」と言うと、結構皆さん自由に好きな色を置く事ができるのですが、何故か肌は決まって肌色を置いてしまいます。でも、果たしてその肌色は、あなたの絵の中で魅力的に見える肌色でしょうか・・・。すでに画面には地塗りから始まって、ある色調が出来つつあると思います。その色調の中で、魅力的と思える色を考えてあげる、ちょっとイメージを巡らしてあげるだけで絵はずっとおしゃれになると思います。
さて、先週に引き続きHさん作品より。
先週のクロッキーから、もう少し時間を描けての制作ですが、アプローチとしては先週のクロッキーとほぼ同じ考え方で制作して頂いています。ただし、今回はポール・デルボーのドローイングをお手本にして頂いています。Hさん、モデルよりもデルボーのドローイングの方を長く見つめられていました。結果的に絵具や線の扱いが、前回のクロッキーよりも表情の幅がでてきて人物の顔の表情も良いですね。最近絵画コースの授業の中でお話ししている事ですが、「絵のイメージを持って描き、モチーフは参考程度に見る」という事を実践されている良い例です。
2010年6月7日月曜日
「短期講座 人物を描く」五日目 下地の効果とクロッキー力
こういった「驚かれてしまう加筆指導(笑)」は主に仕上がりをイメージして、上に置かれる絵具の事を考え、その絵具を効果的に見せるための「下地」の絵具を置いている時です。絵は「層」(絵具の重なり)で出来ています。皆さんは美術館や画集などで「仕上がったもの」しかご覧になる機会が無いので、なかなか絵が「層」で出来ているという感覚が理解しづらいでしょう。でも、この「層」を支える「下地」があるかないかで、上に乗ってくる絵具の見え方は随分違うものになるし、色調・空間の複雑さも生まれるのです。初めにキャンバスに地塗りをして頂いた事と同じですが、この中盤での下地を置いていく行為は、それをより複雑に、空間に絡めながら絵具を置いていくという感じになります。この辺りはなかなか感覚として難しいところですので、実際に手を動かしながら感覚を掴んでいただくしかありません。
さて、今回の短期講座では、いくつかの画集をお見せしながら、具体的に画面作りについてお話ししているのですが、マネやルノアールなどの絵を見ていると、タブロー(完成作品) でありながら、クロッキーを見ているような感じがします。良い形を獲得するために、画面の中で何度も繰り返しクロッキーをしているような、そんな印象を受けますね。
Hさん作品より
今月から遅れて入ってきたHさん。普段ガッシュを使っていらっしゃるHさんは、今回もガッシュとチャコールペンシルを使ってのクロッキーを試して頂きました。Hさんは対象物を正確に写すという事より、半具象的な表現に興味を持ち出してきていらっしゃって、最近の制作でもそうした方向で模索しておられます。今回のクロッキーでは、線をゆっくり引く事・線に表情を付ける事などに注意して頂きました。残り3回ですが、どういう作品が出来るか楽しみです。
Uさん作品より
Uさんはこの短期講座の中でも、もっともキャリアの少ない方で油彩もこれが3枚目です。これまでは10号程度の画面で制作していらっしゃいましたので、初めての15号、かなり大きく感じられている事と思います。戸惑う事が多くてなかなか手が入りづらいようですが、下地を塗りつぶさずきれいな色調が保てています。難しい事ですが、細部にとらわれ過ぎず画面のいろいろな場所見目を向けられると良いですね。
短期講座も残すところ後3週間。皆さん、一緒に頑張りましょう!
2010年6月2日水曜日
お仕事帰りに学べます。そして新講座のご案内。
また、「え塾」では、昨年より絵の楽しみをもっと気軽に、さまざまな側面から学んで頂けるよう「スポット講座」と「短期講座」をご用意させて頂いております。6月からの半期は、「人物クロッキー」「日本画入門」「画材の基礎知識(講義)」「古典技法を学ぶ」「人物を描く」などを企画しています。それぞれ1日から2ヶ月単位ほどで学べます。塾生のみならず、「え塾」の授業を短期で試したい方などのご利用をお待ちしております。
この講座へのお問い合せは電話(045-316-0677)、あるいは「え塾」HPよりお気軽にお問い合わせ下さい。