2011年3月24日木曜日

Yさんの制作のプロセス

繰り返されるたくさんのエスキース

月曜の抽象コースのYさんは、長い間具象絵画を描かれていて、個展も何度か開かれているベテランです。絵のモチーフは、静物や、以前住んでいらした京都のお寺が多かったようです。Yさんは一年前から月曜日の抽象クラスに入会されて、抽象絵画に挑戦されていますが、今回ご紹介するのは、一枚の絵を仕上げるまでのたくさんのエスキースの一部です。

抽象画を描くと言っても具象と抽象の違いにどこかで線引きができる訳でもなく、具象か抽象かということは本来どうでもいいことかもしれません。Yさんはこ の作品では、具象絵画を描かれていたときと変わらずに、古都らしい京都の瓦の家並みから着想されています。エスキース群からは、少し俯瞰した視線で、連続 して見える瓦屋根と、その隙間からのぞく白壁から、説明的な要素をだんだん取り去ったり、逆に具体的なイメージに戻ったりしながら、その風景の中にある絵 画の造形要素を純化していく過程が伺われます。それぞれのエスキースの下には何を意識し、どこに重点を置いて描いたのかをメモされていて、一つのイメージ を追いかけ、追求していく心の動きが伝わってきます。


家の形、屋根の形がまだ残っているが、説明的な要素はだいぶ整理されている

水彩の表情もきれいです

Yさんはエスキースを終え、油彩の制作に入られていますが、その制作の過程も写真で記録されています。画面の中で起きている事柄を見逃さずに、それを充分に味わいながらゆっくりと絵の歩を進められている姿勢には、Yさんの確かな眼が感じられます。
絵の完成が楽しみです。(北)

2011年3月23日水曜日

大震災の日の授業

倒れてひび割れた石膏像の肩

このたびの地震で被災された方々に心からお見舞いを申し上げますとともに、亡くなられた方々とご遺族の皆様に深くお悔やみを申し上げます。

あの大震災の日は金曜日の午後の絵画クラスの授業中でした。石膏像が2体倒れて一部破損しただけで、それ以外の被害は、え塾、横浜美術学院共にありませんでした。もちろん、建物や設備よりも生徒の皆さんに怪我ひとつなかったことには本当に安心しました。え塾では電気、水道も止まることはありませんでしたが、電話も携帯も繋がらず、電車はストップしました。しばらくして落ち着いてから、男性の生徒さんは何時間かかけて歩いてご自宅へ帰られました。余震が何度もあり、時間が経ち、少しずつこの災害の規模が解ってくるにつれて、みなさんご家族の方やお知り合いの方の心配をされていました。とりあえずご自宅に帰ることが出来ないので、描いている方、なかなか落ち着かず、描くどころではない方など様々でしたが、深夜になり、もう学校に泊まることを決めた方々に対して「日本の絵画の系譜」と題して一時間程の美術講義を行ないました。そこから、お酒とつまみでもう少しリラックスした雰囲気で美術のお話などをさせていただいて、後は近くの防災センターから借りてきた毛布が配られ寝ることになったのですが、さすがに皆さん一睡も出来なかったようですね。

交通機関のこともあり、え塾はその後約一週間お休みとさせていただきましたが、停電の指定地域から外れていることもあり、3月21日から授業を再開することが出来ました。東北で被災された方々の一日も早い復興をお祈りしています。(北)