2017年12月7日木曜日

日本画の短期講座「もみ紙に描く」作品が出来上がりました。



日本画の短期講座「もみ紙に描く」の講座が無事終了し、作品が仕上がりましたのでご紹介させていただきます。



Tさん作品
下地に複数の色を施したもみ紙。南天の余白にもみ紙の表情が効いていますね。南天の実の描写も見事です。




 Sさん作品
あえて主役のものを端に配し、余白を活かす構図が功を奏しています。どの程度もみ紙を作る時に絵をイメージされていたのでしょうか?暗さの中に雪を散らせるなど背景の色調を上手く活かせていますね。




Aさん作品
下地の色のせいでしょうか、上に乗せた黄土色がまるで金箔のような華やかさを持って見えています。紅葉した紅葉の雰囲気にとても合っています。




Kさん作品
あえて説明的な描写をしないことで、絵肌の魅力がダイレクトに伝わる作品になっています。色の選び方もいいですね。抑えた色調ながら華やかさ、迫力のある作品に仕上がっています。




Hさん作品
日本画が初挑戦というHさん。難しい日本画の絵の具を見事に使いこなしています。蛇の描写も見事ですね。




Wさん作品
もみ紙の色調と絵肌がとても美しい1枚です。落ち葉の中の妖精という設定で描かれています。絵のテーマと色調がうまく合っていますね。


今回のもみ紙のように、描き出しに、図柄とは関係なく色を塗ったりマチエールを作るという手法は、日本画だけでなく様々なジャンルの絵画でなされていることですが、こういった手法は初心者や経験の少ない方にこそ、どんどんチャレンジしていただきたい手法です。

今回の作品を見ていただくと、描写的な仕事をしていない部分も色調や絵肌などがとても魅力的にできているのがお分かり頂けると思います。「ラクして絵を良くする」と言ってしまうと語弊があるかと思いますが、ただ筆で描写するだけでなく、様々に絵を面白くするテクニックがありますから、ぜひ今後の制作にも取り入れて絵作りを楽しんでいただければと思います。(秋)




2017年11月9日木曜日

日本画の短期講座「もみ紙に描く」はじまりました。

本講座では、全3日間の行程で小作品を仕上げるという内容になっております。初回である本日は「もみ紙」を自作するところから始まりました。



着色した和紙に
胡粉を塗っているところ。


「もみ紙」とは文字通り、揉むことで得られる独特な表情を持つ紙のことですが、ただ揉むだけではなく、下塗りと上塗りの2層の絵の具を塗布することがポイントです。


出来上がった
「もみ紙」の細部。
朱赤と紫の対比が
美しい。


一層目の絵の具はしっかり和紙に絡みついているのに対し、二層目の絵の具は表面に乗っかっているだけなので揉むことで簡単にはがれます。はがれて一層目の絵の具が見え隠れすることにより複雑な表情が出来上がります。上記の作品では一層目の絵の具に朱赤と紫を使用しています。




パネル張りされた
「もみ紙」


来週以降この画面に各々描きたいものを描いていきます。どんな作品になるでしょうか〜。引き続きレポートさせていただきます!(秋)

え塾では、日本画の他にデッサン・水彩・油彩・アクリル画・パステル画など様々な技法が学べる講座をご用意しています。お気軽にお問い合わせ・ご見学ください。

え塾 HPはこちらから→

2017年10月30日月曜日

え塾のウェブサイトをリニューアルしました。

え塾のウェブサイトをリニューアルしました。

もうかれこれ、10年近く使用していたウェブサイトですが、やっとリニューアルしました!これまで対応していなかったスマートフォンにも対応!生徒作品もたくさん盛り込みました。みなさん、ぜひ一度覗いてみてくださいね!

URL www.e-s-w.com/kaiga/




トップページ。
授業の最近作も
ご紹介しています。


制作に役立つ
画材や絵の話の
コラムも作りました。




コースごとに
生徒さんの作品を
掲載しています。





みなさん、ぜひ一度覗いてみてくださいね!(秋山)



2017年10月20日金曜日

え塾展終了しました。ーその2

今回は、前回の記事でも予告しました、え塾展に10年間出品していただいている方々の作品を一部ご紹介させていたきます。


Aさん作品 岩絵の具 雲肌麻紙

現在日本画コースに在籍されています。
紫陽花の花弁をひとつ一つ変化を伴いながら描かれています。色だけでなく、薄さや開き加減などとても丁寧に描かれているのが魅力になっています。難しい岩絵の具をベテランらしく上手に使いこなしていらっしゃって、背景の作り方などもとても綺麗ですね。



Hさん作品 油彩 パネル

現在絵画コース(水)に在籍。
地元の八百屋さんをユーモラスな形態で描かれています。アーケードのストライプやお品書き?など、矩形で構成された画面の中で、ノウゼンカズラの蔓の動きや西瓜の配置のリズムが効いています。一見素朴に見える作品ですが、形や色彩などよく計算された絵作りです。シリーズで描かれたその他の「野菜たち」も大変完成度の高い作品でした。



Iさん作品 アクリル絵の具 紙

アトリエに組まれたモチーフをご自身でアレンジしながら描かれています。作品のタイトルにもありましたが、作者は「ジャン・ジャンセン」の絵の作りを取り入れたいとのことで、背景の作り方など、その様子が伺えます。ジャンセンは、社会人の方たちに人気のある作家の一人ですが、マチエールの作り方、線の引き方、色の魅せ方など、漠然とではなく、具体的に分析するとよく特徴がわかると思います。絵作りするためには、積極的に良い作品から学ぶといいですね。




IKさん作品 オイルパステル キャンバス

IKさんは、今年は「水彩色鉛筆」「オイルパステル」という、絵の具ではない比較的細かくしかえがけない素材を使って、比較的大きな画面に描く、という試みを続けています。もともと、絵の具でもコツコツと画面を埋めていき密度ある画面作りをされていたので、色鉛筆やパステルという素材があっていたようです。もちろん、一筋縄ではいかない部分もあり、オリジナルな描き方を色々模索されていて、それが絵の面白さにつながっています。




Tさん作品 アクリル絵の具 紙

Tさんは、見たものをそのまま描くのではなく、ご自分の好きな画家の作風を学びつつ、それを自分なりのモチーフに置き換えて描くということを続けていらっしゃいます。これまでもパウル・クレーやトーべ・ヤンソンなどから学んだり、最近では日本の画家、金山康喜の作風を取り入れながら描かれています。ご自身が持っているという、古時計やアイロンなどアンティークなモチーフと金山康喜風の作風がとても合っていますね。




Yさん作品 油彩 キャンバス

まるで色鉛筆画を思わせる作品ですが、油彩で描かれています。油彩というと、ゴッホのような濃厚な絵肌をイメージされる方が多いのですが、こういう薄付きの表現も油彩でもできます。細い筆で、線を積み重ね、淡い色調で描かれた風景は、爽やかな風の音までも聞こえてきそうです。




Yさん作品 油彩 キャンバス

空想の風景でしょうか。ヨーロッパを想わせる家々と橋の形態のリズムが面白いですね。青を基調とした画面に赤の色彩が効いています。静物でも風景でも、モチーフにあまり左右されず、ご自分で色調や形など自分らしく描こうとされる姿勢は一貫していています。コラージュやミクストメディアなど素材に対しても柔軟で、絵の手法をよくご存知の方だなぁといつも感心させられます。




Oさん作品 アクリル絵の具 キャンバス

8号〜10号程度の小さな作品を組み合わせ、斜めに構成して展示することで動きのある面白い展示となっています。描かれているのは宇宙?もともと黒い塗りのキャンバスを使用し、ごく少ない描き込みで絵を完成させたり、小品を組み合わせることで大きな空間を感じさせる作品に仕上げたり、アイディアが効いています。黒の中から浮かび上がる色調もとても綺麗でした。



Wさん作品 岩絵の具 雲肌麻紙

「もみ紙」という日本画独自のマチエールを作る手法を使って、背景に表情を作っているのが功を奏しています。水面と植物の抑えた色彩を背景に、鮮やかな錦鯉の朱と白が印象的です。日本画歴はまだ3年(?)ほどですが、難しい岩絵の具をよく使いこなしていらっしゃいます。写真にとらわれずに、もっとイメージで描きたいとおっしゃるWさん。今後の展開が楽しみです。

Wさんがこの作品で行った「もみ紙」の手法が体験できる講座を11月に開催いたします。毎週火曜、週3日で小品を仕上げます。日本画を描いてみたい方、え塾の授業を体験してみたい方、ぜひこの機会をご利用ください。
詳細はこちらをご覧ください。




え塾では、デッサンを基本から学びたい、楽しみながら絵を描きたい、専門的な画材で描きたいなど、社会人の様々な「絵を描きたい!」という気持ちに応えられるよう、日々工夫しながら授業を展開しています。上手くても、上手くなくても、それぞれのレベルで良い絵が描けるよう、スタッフがサポートしますので、「絵を描いてみたい」という方、ぜひ、え塾の授業をお試しください。見学随時行っております。(秋山)



2017年10月12日木曜日

第10回 え塾展終了しました。

お陰様をもちまして、第10回え塾展終了無事終了いたしました。


恒例の記念撮影。
搬出前の慌ただしい時に
お集まり頂きました^^




会場の様子


今回は講師を含め、70名が参加、190点あまりの多彩な作品が展示がされました。今回は天候にも恵まれ、800人を超える来場者があり、多くの方に作品を見ていただくことができました。ご来場くださった皆様、誠にありがとうございました。


さて、今回は展覧会が10回目ということで、初回からずっと展示されている方々へ感謝の気持ちを込めてサプライズで表彰させていただきました。なんと、10回継続されている方が9名!さすがに10年通われている方、上達しているだけでなく、それぞれご自分の描きたいテーマやスタイルをしっかり研究されていて見ごたえのある絵を描かれる方ばかりです。え塾がここまでこられたのも、ここまで立派に展覧会が行えるようになったのも、ひとえに皆様のご協力があったからと、感謝いたします。



次回はその方達の作品をご紹介させていただきます。


まずは、展覧会に参加された皆様、お疲れ様でした^^










2017年9月1日金曜日

第10回 え塾展のお知らせ


暑かった(事もあった)はずなのに、一向に夏らしい思い出のないまま9月になってしまいました。さて、長らく夏休みをいただいていた「え塾」の授業ですが、明日、9月2日より授業を再開いたします。ご見学ご希望の方、ぜひ足をお運びください。


さて、恒例の教室展の「え塾展」今年は10月3日より開催致します。
なんと、今年は記念すべき「第10回」!もう10年も展覧会ができていることに静かな感動を覚えます^^。10年間ずっと出品されている方もえ塾生の中にはいらっしゃって、出品作品も年々レベルが上がっています。

今年も、水彩・油彩・日本画と多種多様な200点余りの作品が並ぶ予定です。絵に興味がある方、え塾への入塾をご検討の方、この機会に是非、え塾生の作品の数々をご覧ください。


え塾展
日程:2017年10月3日(火)〜8日(日)
会場:横浜市民ギャラリー2F展示室


2017年7月21日金曜日

うちわに描く ー日本画コースー

今回は日本画コースの授業からのご紹介です。
講座の内容は「琳派を勉強して、うちわに描いてみる」というものでした。

「琳派(りんぱ)」とは、桃山時代後期に興り、近代までに見られた表現形式で、俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一などが有名です。

今回はその琳派の特徴より、

 ◎技法(たらし込み、没骨法(もっこつほう))


 ◎豊かな装飾性(空間認識を持つ)
 
 ◎デザイン性(形の省略化)

などを留意して制作していただきました。
モチーフも各々に設定していただきましたので、様々なうちわが出来上がりました。









通常、日本画コースでの授業は個々で、自由なテーマでの制作をしておりますが、年に2回程度は技法の勉強ということで、全員が同じ技法を用いて描くことをしております。


前回は「銀箔を焼いて描く」という内容の講座でした。
次回は「もみ紙(和紙を揉んで、その風合いを利用する)に描く」という内容を予定しております。


「銀箔を焼いて描く」より制作例





日本画コースでは、11月に1ヶ月で描ける短期講座を予定しています。手ぶらでご参加いただけますので、日本画に興味のある方は是非この機会をご利用ください!詳細は9月以降にHPよりご案内させていただきます。




2017年6月26日月曜日

半抽象画で描く静物

6月に行った、短期講座「半抽象画で描く静物」終了しました〜!

「半抽象画」というジャンルはそもそもありませんが^^; …
今回は、ものをきちんと描写するという表現から離れて、思い切り「絵肌」「色彩」「線」「形」といった、絵の造形要素としてとても重要な内容に着目していただきたく、授業を企画しました。

授業では、幾つかの作家の作風をお手本に、

 ① 下地作り(色彩とマチエール)
 ② デフォルメと画面構成(線の表現と構図)
 ③ 絵の具を置いていくプロセス(地と図の関係)
 ④ 画面に変化をもたらすコラージュ表現

といった内容をポイントとして説明を交えつつ授業を行いました。なお、今回の課題では、静物モチーフは無し。代わりに瓶や壺、コーヒーミル、コーヒーポット、メガネ、パイプなどの写真素材を皆さんに共通で配布し、それらを自由にデフォルメ、構成していただきながら描いていただきました。

みなさん、戸惑いや不安もありつつも、授業全体としては楽しみながら、さまざまななことに挑戦され、結果的にはほとんどの方が良い結果で授業を終了することができました。

一部未完成のものもありますがご紹介させていただきます。



Iさん作品 水彩

抑えた色彩も綺麗ですが、コラージュの用い方、形態の捕まえ方など
とても計算されています。
コーヒーミルの形の作り方など洒落ていますね!




Tさん作品 水彩

2枚制作されました。線の表現と色彩やコラージュをどのように絡めるかとてもよく研究されています。いずれも黒の色調がうまく画面をまとめています。



K.Kさん作品 水彩

コラージュに葉っぱを貼ってみたり、絵の具を滲ませたり垂らしたり、
実験的に行った表現が効いています!
色彩も綺麗ですね^^



T.Kさん作品 アクリル

時間が足りず、未完成なのが残念ですが、温かみのある形態の掴み方が
絵の雰囲気をまとめています。是非、続きを見たいものです^^



K.Jさん作品 水彩・パステル

彩度の高い色を積極的に使いつつ、爽やかな色調にまとめています。
モチーフにはなかったテーブルクロスの模様の扱いが上手です!




Fさん作品 油彩

2枚制作されました。
モチーフなど構成要素は同じですが、全く異なる雰囲気の絵を模索されています。
絵肌も面白く、線の表現もいいですね!
2枚目の作品はもう少し手を入れるとより面白くなりそうです^^



U.Uさん作品

デフォルメすることが今ひとつピンときていなかったUさんですが、
ランプの扱いやメガネの表現など温かみのある雰囲気に仕上がっています。




Oさん作品

青系の色がお好きだというOさん。
いろいろ試行錯誤されていましたが、透明感のある色調が美しい
画面になりつつあります。これも完成作が見たいですね!




U.Mさん作品 油彩

色にこだわりのあるUさん。
今回、すでに下地から綺麗でした^^
デフォルメされたモチーフも可愛らしく、味がありますね^^



今回の授業でお話しさせていただいたことは、「半抽象表現」の絵の作り方ではなく、具象でも抽象でも使える様々なエッセンスをお話しさせていただきました。今回限りにするのではなく、是非今後の制作にも取り入れてみてくださいね!(秋)



2017年6月5日月曜日

人物講座

短期講座「人物を描く」、終了しました〜。



今回はアンリ・マティスの「金魚」という作品を背景に、その絵の中でも印象的な「赤・黒・緑」などの色彩を生かしてモデルさんのセッティングを行いました。(上記:アトリエの制作風景より)


アンリ・マティス
「金魚」(1912)


飾り気のないいつものアトリエでも、このポスターひとつで、ぐっと雰囲気が華やかになりますした。その雰囲気は制作していた方々のモチベーションアップにもつながったような気がします^^

仕上がった作品より一部ご紹介。


Iさん作品

パステルを使用した作品です。

コスチュームの赤が非常に印象的な作品に仕上がりました。丹念に何層もパステルを重ねたニュアンスのある壁の色や肌の色に対し、きっぱりとした黒と白のストライプが画面を引き締めていますね。マティスのポスターの描かれ方も上手く、金魚や植物の動きのあるリズムが画面を面白くしています。

常に絵心を忘れない、Iさんらしい作品です。



Oさん作品

アクリルを使用した作品です。

人物の胸から上と、描く部分を絞り込むことで人物の表情を上手くつかんだ作品になりました。肌や背景、植物などの色調が静かな雰囲気のある統一された画面感を作っています。人物を描くと、目鼻立に意識がいってしまう方が多いですが、Oさんのこの作品では、顎から首筋、肩にかけての流れなども美しく、柔らかい形態感が魅力的な1枚です。




Uさん作品

水彩作品と、色つきの紙に描かれたスケッチの2作品を制作しました。

水彩は、とてもバランスのとれた色調で描かれ、ポスターや植物、壁に至るまでとても丁寧に絵の具が置かれています。人物のコスチュームのしわのとらえ方も自然で、赤の濃淡が美しいです。体と頭部、手の大きさ、椅子の座面など、若干大きさのバランスが狂っているのが残念です。

最後の1ポーズで描いたスケッチも素敵ですね。人物をじっくり描く機会というのはあまりないと思いますので、講座の間、1枚だけではなく時折素材を変えて軽くスケッチするというのも勉強になると思います。




Fさん作品

油彩による作品です。なんと人物画は初めて!というFさん。初めてでここまで描ければ言うことはありません〜 ^^;マティスのポスターもかなりのレベルで再現できてますね!


Fさん作品2

上記の油彩を描く前に制作されたデッサンです。こちらも上手!コスチュームのしわなど、まだ形になっていない部分などありますが、この手を抜かないで描ききってしまう所が素晴らしいですね。

ご本人は、ちょっと硬くなってしまっているのが気になるということで、今後その辺りはいろんな絵を参考に、絵作りを研究していただければ良いな〜と思っております。



今回の人物講座では、上記作品以外にも、デッサンを中心に学ばれた方、水彩によるスケッチでたくさんの作品を描かれた方など、様々な素材で、ご自分のペースで楽しみながら学ばれていたのが印象的でした。皆様、お疲れ様でした!(秋)