クロッキーとは、人体などを5分~20分程度と、比較的短時間で捉え描写していくことです。通常クロッキー教室では人体を描く事が殆どですが、クロッキーで養う力、つまり「形態を素早く捉える」ということは、普段の静物や風景などを描く時にも必要です。普段人体を描かない人にも、是非付けて頂きたい力ですね。
さて、クロッキーというのはたいてい短い時間の中での制作ですので、無目的に手を動かしていると見えているものに振り回されてしまい、あっという間に時間が過ぎてしまいます。「人体の持つリズムを大切にしたい」「陰影の流れを掴みたい」「線の表情を豊かにしたい」など、それぞれ狙いを持つと良いでしょう。ただし短時間とはいえ、ただ練習としてのみ描くのではなく、表現として成り立たせようという気持ちも大切です。1枚の画面の中での「構図」をしっかりイメージする事や、描画材の準備なども大切な要素です。画集などを利用し、お手本にしたいクロッキーのイメージを具体的に持つのも良いでしょう。
クロッキーの描画材
上記の図版はドガのクロッキーです。ドガのパステル画は有名ですが、このクロッキーも2色のパステルを使って描いています。柔らかく陰影を捉える一方で線の扱いにも表情を持たせています。パステルは1本で面・線のどちらも描け、また強弱の差をとても出し易いため、抑揚を付け易い素材です。触角的に扱え、筆や鉛筆などに比べ難しいテクニックも必要としない素材ですので、クロッキー初心者にもお薦めの素材です。また、この作品のように、有彩色の紙を使うというのも面白いでしょう。ざらりとした質感の紙では、パステルもよく引っかかり線の表情も面白く出ます。この紙に、この描画材で描いたら面白そうだ・・・そんなイメージを持つ事も、クロッキーを数倍楽しくしてくれる事でしょう。
クロッキーにはこれで描かなくてはならないという、決まった約束はありません。上記に挙げたパステル(初心者の方にはハードパステルが扱いやすいでしょう)はクロッキーに向いた描画材ですが、水彩・ペン・コンテ・チャコールペンシルなど様々な素材が使えます。また、画面サイズも重要な要素です。クロッキー初心者にはF6~8号サイズぐらいが、画面全体が見渡せて良いでしょう。市販のクロッキー帳も良いですが、水彩やパステルなどを使う場合は、もう少し厚手の紙を選んだ方が良いでしょう。特にタブーはありませんので、描画材と紙の相性を気軽に試してご自分にあったクロッキー素材を探してみて下さい。