2009年11月10日火曜日

抽象コース授業紹介

抽象コースの授業紹介です。
抽象クラスは毎回画集をお見せして、30分から1時間程度お話をしてから実技授業に入るという授業形態が定着しています。9月から、「画面への接触」をテーマに毎回一人ずつ、計7人の画集をテキストとして見てきました。その作家の表現スタイルの特徴、素材、時代背景や同時代の作家、影響を受けた作家などにも話が及びました。また、一枚の作品から見て取れる具体的な作者の画面への触れ方や素材への感受性などを読み取ってきました。以下は取り上げた作家のリストです。

第1回ウィレム・デ・クーニング
第2回ジャクソン・ポロック
第3回ジム・ダイン
第4回サイ・トォンブリー
第5回中西夏之
第6回ホルスト・ヤンセン
第7回ハワード・ホジキン

サイ・トォンブリーやホルスト・ヤンセン、ハワード・ホジキンの作品は、かなり興味を持たれた方がいらっしゃいました。描画材の画面への接触に注目すると、線が重要な意味を持つような抽象作家が多くなりました。また、それぞれの作家の作品の展開と追求という、水平方向と垂直方向の作品制作の連続性にも注目しました。
実技授業はそれぞれの方が、自分の興味のある描画材を用いてスタイルの異なる作品を制作しています。共通している部分は、皆さん実験的な姿勢で制作されていることです。手探りで、素材をこのように使ってみよう、線をこう使ったらどうなるだろうと常に自分の解らないことを試していく姿勢があることです。そしてまたそれを、不毛な勉強としてではなく、皆さん楽しみながらやられている点です。さて、今日はその中でも最もその傾向の強いTさんの作品をご紹介しましょう。Tさんはこのようなスタイルで何枚も実験を繰り返しています。画集で紹介した作家の表現で興味を持った素材の使い方や表現スタイルを、自分の絵に取り込もうとしていることが作品から窺われます。一見子供の描いた絵のように見えるかもしれませんが、それは安易に画面の中にバランスを作ってしまうことを避けるように、常に異物を持ち込みたいという意識の現れかもしれません。水彩紙にパステル、オイルパステル、クレヨン、アクリルと、複数の素材で描いています。今後の追求と展開が楽しみです。