抽象コースの授業紹介です。
抽象クラスは毎回画集をお見せして、30分から1時間程度お話をしてから実技授業に入るという授業形態が定着しています。9月から、「画面への接触」をテーマに毎回一人ずつ、計7人の画集をテキストとして見てきました。その作家の表現スタイルの特徴、素材、時代背景や同時代の作家、影響を受けた作家などにも話が及びました。また、一枚の作品から見て取れる具体的な作者の画面への触れ方や素材への感受性などを読み取ってきました。以下は取り上げた作家のリストです。
第1回ウィレム・デ・クーニング
第2回ジャクソン・ポロック
第3回ジム・ダイン
第4回サイ・トォンブリー
第5回中西夏之
第6回ホルスト・ヤンセン
第7回ハワード・ホジキン
サイ・トォンブリーやホルスト・ヤンセン、ハワード・ホジキンの作品は、かなり興味を持たれた方がいらっしゃいました。描画材の画面への接触に注目すると、線が重要な意味を持つような抽象作家が多くなりました。また、それぞれの作家の作品の展開と追求という、水平方向と垂直方向の作品制作の連続性にも注目しました。
実技授業はそれぞれの方が、自分の興味のある描画材を用いてスタイルの異なる作品を制作しています。共通している部分は、皆さん実験的な姿勢で制作されていることです。手探りで、素材をこのように使ってみよう、線をこう使ったらどうなるだろうと常に自分の解らないことを試していく姿勢があることです。そしてまたそれを、不毛な勉強としてではなく、皆さん楽しみながらやられている点です。さて、今日はその中でも最もその傾向の強いTさんの作品をご紹介しましょう。Tさんはこのようなスタイルで何枚も実験を繰り返しています。画集で紹介した作家の表現で興味を持った素材の使い方や表現スタイルを、自分の絵に取り込もうとしていることが作品から窺われます。一見子供の描いた絵のように見えるかもしれませんが、それは安易に画面の中にバランスを作ってしまうことを避けるように、常に異物を持ち込みたいという意識の現れかもしれません。水彩紙にパステル、オイルパステル、クレヨン、アクリルと、複数の素材で描いています。今後の追求と展開が楽しみです。
2009年11月10日火曜日
2009年11月3日火曜日
絵画クラス授業
絵画クラスの授業を紹介します。
今回は、金曜のクラスの授業内に秋山先生にデモンストレーションとして透明水彩で静物を描いてもらいましたので、その制作過程を解説しようと思います。
まず、画面全体のバランスをよく見ながら鉛筆であたりをつけます。後々絵具がのった時に、濁ったり線が浮き出ないように軽くあたっています。秋山先生いわく、「この作業をしている時が、一番モチーフをよく観察しました。」
絵具を置き始めました。置いている絵具の形は、対象の個々の物のシルエットに、塗り絵のようにはまる形ではありませんね。色も固有色(モチーフの元々の色)を置かず、茶系から、黄、緑系までの色相の色を使っています。ここで意識されていることは、モチーフ個々の形や色ではなく、空間全体のつながり、脈絡です。また、全体の色調のまとまりです。この最初のアプローチの意識が非常に大切で、皆さんに最も注目していただきたい部分です。
さて、彩度の高い色が入ってきたことによって絵が活き活きとしてきました。形と形のぶつかりの強いところを決めだしたことにより、メリハリが出来、画面が引き締まりつつあります。背景の画集に置かれた紫と、手前の瓶に置かれた暗いブルーなど、画面を対応した関係で捉えようとしていることが解るでしょうか。
完成です。今回は、固有色から余り離れない色の絵を描いてくれと、秋山先生に事前に要望を出しておきましたので、終盤に固有色を意識した色が入ってきました。皿の中のりんごとレモンは質感にも迫り、主役としての密度が随分出てきました。周囲の物の表現は、主役の見え方が映えるように考えられ、同じような描き込みにならないよう配慮されています。秋山先生が描いているのをご覧になった方は気がつかれたかもしれませんが、先生がモチーフのほうに目を向けている時間は絵具を置き始めてからかなり少なくなっていました。自分の画面を見ている時間がほとんどで、たまに何かを確認するようにモチーフを見る程度でした。見える物を写すことが目的ではなく、モチーフを利用して自分の画面の中に作ろうとしている関係が重要だからですね。
秋山先生お疲れさまでした。
今月のモチーフから2人の生徒さんの作品を紹介させていただきます。
まずOさんの油彩作品です。Oさんは元々持っているバランスが非常によく、この作品がなんと2枚目の油彩です。描き出しや途中の段階で、もの同士の関係が希薄でバラバラに見えていたり、色の深みがなかなか出ませんでしたが、後半、捉え方が徐々によくなり、色も複雑になってきました。次回はもう少し最初のベースの段階で自由に絵具が置けると良いですね。
次はHさんの作品です。今回、Hさんは1つのモチーフから、要素を自由に抜き出したり、拡大して構成した作品と、もう少し客観的な視点で捉え、描写(ご本人はそれを大の苦手とおっしゃっていましたが)した作品を描きました。どちらも色の振動が非常に美しく、最初から最後まで丁寧に画面に接して透明水彩の美しさを活かした表現になりました。
今回は、金曜のクラスの授業内に秋山先生にデモンストレーションとして透明水彩で静物を描いてもらいましたので、その制作過程を解説しようと思います。
まず、画面全体のバランスをよく見ながら鉛筆であたりをつけます。後々絵具がのった時に、濁ったり線が浮き出ないように軽くあたっています。秋山先生いわく、「この作業をしている時が、一番モチーフをよく観察しました。」
絵具を置き始めました。置いている絵具の形は、対象の個々の物のシルエットに、塗り絵のようにはまる形ではありませんね。色も固有色(モチーフの元々の色)を置かず、茶系から、黄、緑系までの色相の色を使っています。ここで意識されていることは、モチーフ個々の形や色ではなく、空間全体のつながり、脈絡です。また、全体の色調のまとまりです。この最初のアプローチの意識が非常に大切で、皆さんに最も注目していただきたい部分です。
さて、彩度の高い色が入ってきたことによって絵が活き活きとしてきました。形と形のぶつかりの強いところを決めだしたことにより、メリハリが出来、画面が引き締まりつつあります。背景の画集に置かれた紫と、手前の瓶に置かれた暗いブルーなど、画面を対応した関係で捉えようとしていることが解るでしょうか。
完成です。今回は、固有色から余り離れない色の絵を描いてくれと、秋山先生に事前に要望を出しておきましたので、終盤に固有色を意識した色が入ってきました。皿の中のりんごとレモンは質感にも迫り、主役としての密度が随分出てきました。周囲の物の表現は、主役の見え方が映えるように考えられ、同じような描き込みにならないよう配慮されています。秋山先生が描いているのをご覧になった方は気がつかれたかもしれませんが、先生がモチーフのほうに目を向けている時間は絵具を置き始めてからかなり少なくなっていました。自分の画面を見ている時間がほとんどで、たまに何かを確認するようにモチーフを見る程度でした。見える物を写すことが目的ではなく、モチーフを利用して自分の画面の中に作ろうとしている関係が重要だからですね。
秋山先生お疲れさまでした。
今月のモチーフから2人の生徒さんの作品を紹介させていただきます。
まずOさんの油彩作品です。Oさんは元々持っているバランスが非常によく、この作品がなんと2枚目の油彩です。描き出しや途中の段階で、もの同士の関係が希薄でバラバラに見えていたり、色の深みがなかなか出ませんでしたが、後半、捉え方が徐々によくなり、色も複雑になってきました。次回はもう少し最初のベースの段階で自由に絵具が置けると良いですね。
次はHさんの作品です。今回、Hさんは1つのモチーフから、要素を自由に抜き出したり、拡大して構成した作品と、もう少し客観的な視点で捉え、描写(ご本人はそれを大の苦手とおっしゃっていましたが)した作品を描きました。どちらも色の振動が非常に美しく、最初から最後まで丁寧に画面に接して透明水彩の美しさを活かした表現になりました。
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