2010年8月10日火曜日

予習版!短期講座第3弾「古典技法を学ぶ」:その3

前回は、テンペラ絵具での描写についてご紹介しました。今回は、固有色を着けていく前に、ホワイトの絵具で描画していく際のコツを少しお話ししておきます。

前回の2枚目の図版のところでお話しした中に、「細かい線のタッチで描かれている」という部分があります。なぜ線のタッチで描くかというと、線の疎密で明るさ暗さをコントロールしたいからです。単純に明るいところは線の密度を濃く、暗いところは密度を低くする事で「明~暗のグラデーション」を作る事が出来ます。図版で言うと(下記の図版を参照)、パンの下に敷かれている紙の、もっとも明るい部分はかなり線が密になっていてタッチも見えないぐらいになっていますね。逆に、パンの中など中間~暗色の部分はタッチがしっかり見えて、下地が透けているのがわかります。

いきなりべた塗りで、下地を潰してしまわずに、下地の暗さを活かしながら「明~暗」をコントロールする、という事が描画のコツです。

しかし、実際に筆を持って描写してみると、この「細かい線のタッチ」というのが初めての方にはなかなか難しいのです。小雨のようにサッサッと引けると良いのですが、最初は難儀だと感じる方が多いと思います。そういう時は無理せず、細かい部分は「点描する」・広い面は「大きめの筆を使う」・グラデーションする部分は「ぼかし筆を使う」で対応していきましょう。



上の図版の背景部分は大きめな筆を使っています。この面積を線描で埋めるのは大変ですのでこういった部分は大きめな筆でOKです。ただし、この場合でも、濃い絵具で塗りつぶしてしまうのではなく、下地を透かすようにしているところがポイントです。



ぼかし筆:たたき筆と記載される場合も。画面上で絵具を軽くたたいてグラデーションさせていくのに使います。ぼかし筆にもいろいろありますが、今回の講座ではお貸しする予定でいます。

前回、この回で「固有色を着ける」と予告してしまいましたが、それは次回に・・・。